2021年の英国EU離脱以来、商標登録数および商標保護を巡る法的環境は大きな影響を受けています。商標権者が直面する課題を分析するとともに、権利の更新についてご案内いたします。
2024年1月1日 すべてが変わる
2023年 維持されたEU法(廃止・改正)
2024年1月1日、「2023年 維持されたEU法(廃止・改正)」が英国で施行されました。これは英国内の知財権者、特に商標、著作権、意匠、SPC(補充的保護証明書)の所有者にとって重要な変更となります。
同法の施行は英国内におけるEU法の優位性の撤廃、そしてすべての法廷におけるEU判例法からの逸脱の容認、という2つの重要な変更をもたらしました。
EU法の多くは現在も英国内で有効ですが、同法によって英国の裁判所はEU判例法を踏襲するか、あるいは欧州裁判所の過去の判決から逸脱するか検討することができるようになりました。そのため、控訴院による2023年の黙認の法理 (law of acquiescence) に関する判決 のように、今後はEU法から逸脱する流れになると思われます。つまり英国とEUの双方に知的財産権を持つのであれば、法の違いを考慮し、それぞれの管轄域に即した戦略を取る必要があります。
従って知的財産権所有者は、このことがポートフォリオに及ぼし得る影響にも注意する必要があります。それは既存の権利によって保護される範囲についてはもちろん、今後どのように権利が行使されるか、という点についても同様です。より詳しい情報はこちら よりご覧ください。
英国とEUに拠点を構える弊所は両地域の知的財産権所有者の理想的なパートナーとして、今回の法改正がもたらす影響や、両地域で競争力を維持するための最適な知財管理についてアドバイスさせていただきます。
UKIPO(英国知的財産庁)における代理権の変更
UKIPO(英国知的財産庁)における代理権についても、いくつかの重要な変更があります。2024年1月1日以降、英国外の事業者が英国商標に関する法的手続きを行う場合、英国内に拠点を置く代理人をUKIPOに登録する必要があります。回答期限の短いUKIPOからの通達の受領や対応に遅れが生じると、保有する権利や対抗措置の機会を失いかねません。お早めに英国拠点の代理人を任命することでポートフォリオをより効果的に管理できる上、UKIPOへの迅速な対応が可能となり、上記のリスクを最小限に抑えることができます。
変更内容をわかりやすく表にまとめています(英語のみ)
また、マドリッド協定に基づく英国指定の国際登録についても、代理人に関する実務の変更が最近発表されました(詳細はこちら)。先述のとおり、最適な出願戦略のアドバイスを得るためにも、英国拠点の代理人を早急に選定されることをおすすめいたします(異議申立に関する戦略についてはこちら)。
お困りのことがありましたら beyondbrexit@marks-clerk.com まで遠慮なくご相談ください。
異議申立および紛争
EUIPOとUKIPOの手続きは類似しつつも、いくつかの重要な違いがあります。特に異議申立に関する相違点には注意が必要です(主な相違点はこちら)。EUIPOとUKIPOのどちらを選択するか、また双方での異議申立をどのように連動させるか、商標権者にとって新たな悩みの種といえるでしょう。(異議申立を同時に進めるには)
英国の異議申立手続きは訴訟に似ています。そのため専門家のしっかりとしたサポートが不可欠です(英国における異議申立)。EUの異議申立は、事務的な側面の強い手続きですが、こちらも専門家のサポートは欠かせません(EUにおける異議申立)。多くの異議申立は和解によって決着するため、和解交渉の経験値が異議申立の成否を大きく左右します(和解交渉に関して詳しくはこちら)。
ポートフォリオの管理
大半の商標権者は英国とEU、それぞれの商標を同時並行で管理しています。このような場合、特許権者は毎年さまざまな決断を下す必要に迫られますが、適切な戦略と事前の計画があれば心配ありません。
ポートフォリオ管理についてお困りのことがありましたら、ぜひ弊所へご相談ください。