英国EU離脱がもたらした影響のひとつが、英国における登録商標の大幅な増加です。これは離脱前に登録されていたEU商標が複製されたこと、そこに新規出願された英国商標が加わったことが要因です。さらに、中国企業による英国商標の出願も活発化しています。このような環境変化により、商標権者や英国の代理人は様々な課題に直面しています。
数字で見るEU離脱の影響
約250万件の登録
2021年1月1日に、約150万件ものEU特許の複製が英国商標登録簿に加わりました。現在では、約250万件もの発効済み商標が登録された巨大な登録簿と化しています。
商標権者への影響
登録商標の急増により、商標権者は以下のような課題に直面しています:
- クリアランス調査と侵害リスク
現在の英国市場においては、新製品リリース前のデュー・デリジェンスが以前よりも複雑になっています。侵害リスクのある登録商標が250万件もあるため、ブランド名を決めるのも容易ではありません。
マークス&クラークでは、幅広い分野のクライアントに対し、調査の実施と評価、侵害リスク軽減に向けたアドバイスを提供しています。当事務所が侵害リスク軽減に向けた戦略を練ることで、商標権者はクリアランス調査や訴訟・係争に万全の体制で臨むことができます。 - ポートフォリオ管理・更新・維持
多くの企業ではこの12か月前後の間に英国商標ポートフォリオが激増し、管理コストや業務負担も増加しています。私たちが推奨しているのは、定期的にポートフォリオを見直し、最新の状態を保つこと。事業方針を正しく反映したポートフォリオになっているか、常に目を光らせておくことが重要です。
2021年の英国商標出願は43%増加
2021年は英国知的財産庁(UKIPO)に直接出願された商標が163,903件、マドリッド協定に基づく国際登録が32,647件で過去最高を記録。2020年から43%の大幅増加となりました。
商標権者への影響
出願数の増加により、英国の商標権者は以下のような課題に直面しています:
- 商標調査による引例・類似商標権者への通知
UKIPOによる出願審査においては、先行する類似商標の調査も行われます。出願人には、調査で見つかったすべての引例商標の詳細が知らされるとともに、内容の補正または出願取下げを検討する機会が与えられます。出願手続きが進み、異議申立期間に入ると、引例商標の商標権者に通知が届きます。この通知は重要で、新たに出願された商標が既存の商標権に不利な影響を与える可能性がないか、入念に確認する必要があります。専門家のアドバイスを受け、異議申立や対抗措置を取ることも考えなければなりません。
商標調査の結果、先行する類似商標の引例が付された出願は、2021年に前年比58%増の51,250件に上りました。また、引例の対象となった先行商標、および通知の総数は2020年から53%増え、191,816件に達しました。
この結果、英国での商標権者と代理人の管理負担は大幅に増加。そこでマークス&クラークでは、通知の管理や簡潔なアドバイスを通してクライアントの意思決定を支援するサービスを構築しています。高い専門性と経験値を持つエキスパートにより、高品質かつ費用対効果の高いサポートを提供させていただきます。
また、同様の課題に直面するリスクは世界中のどの管轄域にも存在するため、商標ウォッチングサービスを利用するのも効果的です。ウォッチングや権利行使と通知の管理を正しく連携させることが、商標戦略を成功させる秘訣です。 - 予備的異議申立
英国における異議申立期間は公告から2か月間ですが、TM7a「予備的異議申立の通知」を提出すれば、自動的に延長されます。この手続きにより、第三者が異議申立を検討していることが出願人に通知されます。
TM7aの申請数は増加しており、2021年にはTM7aに基づく通知が前年比87%増の13,978件に上りました。すなわち、新たに出願された商標の7%以上が予備的異議申立の通知を受けたことになります。 - 正式な異議申立
予備的異議申立が行われても、そのすべてが正式な異議申立に至るとは限りません。また、多くの異議申立は2ヵ月の申立期間内に、予備的な通知や事前の警告なしに提起されます。このような形の正式な異議申立も前年比71%増の6,793件と、大幅に増加しています。 - 和解交渉
予備的または正式な異議申立の多くは、和解交渉によって異議申立の取下げ、あるいは出願の取下げや補正という形で終結します。これは、英国には和解交渉のための「クーリングオフ期間」という制度があり、当事者はその間に和解案を模索することが可能なためです。
クーリングオフ期間の申請数は、前年比で53%増加しており。
全体的に増加傾向にあります
下記のグラフは2019年~2021年の出願数、通知数、異議申立数の急激な増加を示しています。
将来的に、皆様がこれらの課題に向き合う必要に迫られるのは間違いありません。早急に商標戦略や意思決定プロセスを見直し、来るべき事態に備えましょう。
マークス&クラークでは幅広い業界のクライアントに、商標戦略の策定や意思決定のサポートを行ってきました。毎年、何百件もの異議申立や、数千件に上る通知を管理し、交渉の代理人や和解契約書の作成業務も数多く務めています。
私たちのチームが誇るすぐれたスキル、知識、経験は他の追随を許しません。皆様の貴重な知的財産をリスクから守り、事業を成功に導く準備を共に始めましょう。
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