昨年の統一特許裁判所(UPC)設立は、知的財産を巡る法制度の歴史に新たな1ページを刻みました。マークス&クラークは審理への参加やクライアントのための訴訟手続きなどを通して、このUPCと密接に関わってきました。
2024年6月7日、設立から間もない統一特許裁判所で歴史的な審理が行われました。Meril GmbH社、Meril Life Sciences Pvt. Ltd社およびMeril Italy社が原告となり、米国の医療機器企業であるEdwards Lifesciences Corporation社が所有する欧州特許第3646825号の取消訴訟が行われ、マークス&クラークは共同代理人、弁護人を務めました。弊所パートナーでUPC代理人でもあるJonathan Staffordが弁護チームを率い、UPC代理人のGreg Carty-Hornsby(代表)がサポート。弊所の訴訟弁護士でUPCのエキスパート、Charlie Balmeも審問に参加しました。
この審問は、2023年8月にMeril Italy社がEdwards社の欧州特許第3646825号に対して提起したセントラルアタックと、Meril GmbH社およびMeril Life Sciences Pvt. Ltd.社が受けた同特許を巡る侵害訴訟への反訴(ミュンヘン地方部に提起し、その後パリ中央部へ移管)を合同で扱ったものでした。
原告の請求により、この審問はパリ商事裁判所の国際商事部にあるもっとも広い部屋で開かれました。裁判長兼主任裁判官のPaolo Catallozzi氏が明確な予備的見解は示さずに概要を説明した後、午前9時30分に審問が開始。原告側の代理人が特許取消の事由を述べるため計2時間が与えられました。原告代理人は、当該特許の出願に関して「特許の補正」「事項の追加」「優先権」「クレーム解釈」「新規性および進歩性」に手続き上の不備があると主張。双方の当事者とも裁判室の大型スクリーンに資料を投影することを許可され、被告である特許権者にも2時間の回答時間が与えられました。昼食をはさんで双方から短い反論が交わされ、裁判官による質疑応答を経て16時30分に審問は終了。2つの事案を同じ場で、しかし個別に審問した後、当日中に決定を下すことができないこと、近日中に2つの事案に対する決定を一括で下すことが裁判長から述べられ、閉廷しました。
本件のUPCによる効率的かつ迅速な手続きは称賛に値し、「複雑な訴訟も請求から1年以内に終わらせる」という当初の約束を果たすものでした。今回の訴訟ではフランス、ドイツ、英国の優秀な国際弁護士がチームを結成し、「国境を超えた法的な連携を促進する」というUPCの役割がいかんなく発揮されました。このような協力関係はマークス&クラークが得意とするもので、訴訟弁護士・弁理士、そして各地域の法律家が合同チームを結成し、欧州全域でクライアントの訴訟を数多くサポートしてきました。
UPCにおける私たちの経験は、この新しい裁判所の意義を強調するのはもちろん、「法律の最前線を走り続ける」という私たちの使命を再確認するものでした。私たちはUPCによって法律の可能性がさらに広がることを喜ばしく思うとともに、その機能を最大限活用して、より良いリーガルサービスを提供したいと考えています。
写真左側から Felipe Zilly (Hogan Lovells), Yun-Suk Jang (Hogan Lovells), Carole-Anne Bauer (Gide x Regimbeau), Alexander Klicznik (Hogan Lovells), Emmanuel Larere (Gide x Regimbeau), Peter-Michael Weisse (Wildanger), Nilay Lad (Meril), Andreas von Falck (Hogan Lovells), Raphaëlle Dequiré-Portier (Gide x Regimbeau), Greg Carty-Hornsby (Marks & Clerk), Anne Seibel (Gide x Regimbeau), Jonathan Stafford (Marks & Clerk), Luca Chavallier (Gide x Regimbeau), Aurélien Grimberg (Gide x Regimbeau), Beatrice Wilden (Hogan Lovells), Julien Guesnier (Gide x Regimbeau), Ludivine Meissirel-Marquot (Gide x Regimbeau).