待望の統一特許裁判所(UPC)――EU24か国の特許訴訟を扱う新たな法廷がいよいよ扉を開こうとしています。それに伴い、ひとつの認可で全加盟国に効力が及ぶ単一特許も導入されます。EU特許保有者はそれぞれのポートフォリオと特許戦略を見直し、オプトアウト、すなわち既存の従来型欧州特許をUPCの管轄から除外するかどうかの決断を迫られることになります。
オーストリアの統一特許裁判所協定批准を受け、2022年1月19日よりUPC協定の暫定適用が始まっています。新法廷での裁判規則の草案など、多くの準備作業が完了し、技術、法律に精通した裁判官の養成、裁判所の建設、ITシステムの構築も進められています。しかしながら、暫定適用の期間は不透明で、少なくとも6か月、場合によっては1年近くに及ぶかもしれません。加盟国は行政手続きの完了に加え、当初はロンドンに置かれる予定だった中央部支部の新たな設置都市について合意する必要があります。イタリア、オランダ、あるいは既に2つの支部が置かれているパリとミュンヘンに機能を分割する案など、複数の選択肢が候補に挙がっています。
あらゆる準備が整い次第、ドイツのUPC協定批准をもって3~4か月間のサンライズ期間へと移行します。このサンライズ期間中に、EU特許の保有者はオプトアウトの手続きを行うことができますが、保有者の皆様には事前に特許のポートフォリオを見直し、十分な時間を確保しておくことをお勧めします。オプトアウトの登録は、該当する特許の法律上の所有者が行う必要がありますが、企業譲渡やグループ再編などによって登録簿の記載名と法律上の所有者が異なる場合もあります。従って、事前に保有者の名義を確認しておくことが重要なのです。
2013年のUPC協定の調印以来、マークス&クラークはその後の展開を注視し続けてきました。従って、ヨーロッパの特許制度が大きく変化する中でも、クライアントの皆様を確実にサポートできるノウハウを備えています。ウェビナーや当社ウェブサイト上の資料に加え、今後は直接のお打合せを通じて、単一特許やUPCへの移行に伴う準備をサポートさせていただきます。それまでにご質問等がございましたら、マークス&クラークの担当者、または UPC@marks-clerk.com へお問い合わせください。